研究者の先生方へ

 多くの研究者の先生方にとっては、「特許」は未だに異質なものであると思います。一方、現代社会においては、研究成果の健全な実用化のためには特許の問題は避けて通れません。
 仮に、“独占せず、新たな研究成果を万人が活用できるように”との思いにより、特許を取得することなくこれを公開した場合、大多数の研究成果は実質的に実用化されないか、又は、一部の企業が巧妙な特許出願等によってその研究成果による利益を実質的に独占する結果になる他はありません。このことを、iPS細胞によりノーベル賞を受賞された山中伸弥先生は「どんな発明も特許が確保できなければ実用化は極めて困難になる。」(日経新聞、2014.5.1)と表現されています。
 しかしながら、多くの先生方においては、特許取得が必要な研究成果を実際に得た際に、具体的に何をどうすれば良いか分からない状態に陥られると思います。そして、学会発表の必要性等との狭間で十分に処置がされない場合も多いと思います。
 私は、大学に在籍していた期間、生まれ落ちた研究成果(発明)の価値を保全する“救急車”であろうと考えていました。なるべく早くその発明の状態を拝見し、必要な特許の準備をする等の初動対応を行う“救急車”です。新しい研究成果に潜在する価値を保全して実用化に繋げることは社会の利益に叶うことであり、大学等に知財活用が求めたられた理由の本質であると考えています。
 また、大学発明は研究者の先生方の創意や独創性から生じるものであって、これを最も有効に活用できる主体は発明者の先生であると思います。このため、研究者の先生方に「発明の出口」までを見通して頂くことが、大学における知財活用において最重要な事項と考えています。
 現在、私は大学の外部の弁理士ですが、上記の志は変わっていません。そして、一つでも多くの研究成果が実用化される場所に携わり、協力させて頂きたいと考えています。

 上記のような観点から、主に研究者の先生方を対象に以下のような業務をご提供いたしますので、必要に応じてお問い合わせを頂ければと存じます。なお、以下には典型的な内容を挙げますが、他にもご希望の内容がありましたらご相談下さい。

(1)具体的な発明(技術)や、実用化の計画等が存在する場面において
 研究成果(発明)の“救急車”として、具体的な研究成果(発明)の内容と特許出願の目的、実用化の計画等をお伺いして、特に特許の側面でどのような強み(弱み)が存在し、より有効な内容の特許権を取得するためにどのような方針を採るべきか等を検討、ご相談させて頂きます。
 また、発明の実用化(事業化)を考える際には、現有のデータ等に基づいて取得が見込まれる特許権の範囲の予測や、その特許権で保護できる事業内容の把握等が不可欠です。さらに、その検討の結果から、更に取得することが必要な特許権の内容(範囲)等や、外部との協力の必要性等が導き出されることもあります。
 大学発明についての特許取得や実用化がより良好に実現できるように、特許の面から貢献させて頂きます。

(2)研究者の先生方を対象とした特許取得、特許活用についての講座等
 大学においても特許が不可欠となる一方で、特に企業経験等のない先生方におかれては特許取得や活用に関する基礎的な知識が必ずしも十分でない場合も多いと思います。一方、一定の知識を得ることで具体的な目標を定め易くなり、研究等の計画を加速することが可能と思います。
 このため、研究者の先生方を対象として、以下のような側面から実践的な内容の講座をご提供致します。

①「どのような発明」であれば、進歩性等が認められて特許が取得できるかをご紹介します。
 必ずしも”大発明”でなくとも、発明が所定の条件を満たすことで特許は取得できます。発明が従来技術に対してどのような状態になることで特許が取得できるか等を理解しておくことで、より円滑に特許の活用を開始することができます。
 大学の研究室で日々、生まれる発明に基づいて有用な特許を取得するための基礎知識として、特許要件としての新規性・進歩性の考え方や、具体的な実験結果と取得される特許の範囲の関係等についてご紹介を致します。

②良い特許を取得する観点から、特許に特有の事情等のご紹介します。
 理系の学術論文と特許とは、共に技術的な事項に関するものであるために共通点が多くあります。しかし、その目的が全く違うことに起因して、その望ましい記載内容等に違いがあり、特に特許においてのみ必要とされる記載事項等も存在します。そして、特許で特有に必要となる記載事項に関しては、特許を専門とする知財部員や弁理士が案件毎に精査して構築するものです。
 このため、学術論文と特許との基本的な構造の違いをご紹介します。また、発明者として何を行い、どこから外部の弁理士等と協力すべきか等をご紹介します。良い特許の取得には、専門家との協力が欠かせません。